研究概要 |
平成18年度は、冷虚血再潅流直後の肝臓におけるROS産生源はKupffer細胞ではなく肝細胞である可能性が高いとの結果を得た。 平成19年度はDominant negative Rho-kinase(DNRhoK)をドナー肝細胞に導入し、Rho-kinaseを介した、ROS産生経路の存在を証明すると共に、肝細胞のRho-kinaseが虚血再潅流傷害の遺伝子治療のタ-ゲットになり得ることを証明した。 1. DNRhoK、LacZ(control)をドナーラット肝細胞に導入後、レシピエントラットで再潅流直後のROSを測定したところ、DNRhoK導入群で有意に抑制された。さらに、これらのROSはNADPH oxydase inhibiorで有意に抑制された。よって、肝虚血再潅流傷害における再潅流直後のROSは肝細胞のRho-kinaseを介して、NADPH oxydase systemにより産生される可能性があると考えられた。 2. DNRhoK、LacZ(control)をドナーラット肝細胞に導入し、DNRhoK導入群で虚血最潅流傷害が抑制されることを証明した。肝障害(AST/ALT)、炎症性サイトカイン(TNFα, IL-1β)、いずれもDNRhoK導入群で有意に抑制された。また、肝虚血再潅流傷害の結果生じるとされる、肝内微小循環障害をLaser Dopplerを用いて評価したところ、DNRhoK導入群おいて、有意に抑制されていた。 3. ラット肝移植モデルにおける生存率の比較を行い、DNRhoK導入群で有意に良好であった。 平成18-19年の研究結果より、肝移植後の虚血再潅流傷害を回避するために、ドナー肝へのDNRhoK導入により肝細胞NADPH oxydaseにおけるROS産生を抑制することが有効であることが証明された。肝細胞のRho/kinaseは肝虚血再潅流傷害のターゲットとして有用と考えられた。
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