わが国のドナー不足は深刻であり、marginal donorからの移植が多いことが特徴である。そのため、移植臓器のViabilityをいかに良好に保つかが非常に重要である。移植臓器障害のひとつの大きな要因として虚血再潅流障害による臓器障害があげられる。我々は、蛋白導入によって虚血再潅流障害の軽減を得ることを目標として研究を行っている。我々のラボで既に確立したブタを用いた自己膵・腎単独移植モデルを用いて研究を行った。蛋白導入に用いるPTDとしては、アルギニンを11個連続させた11R(RRRRRRRRRRR)を用いた。また導入蛋白としてJNK inhibitor(c-Jun NH_2 terminal kinase inhibitor:RPKRPTTLNTFPQVPRSQDT)を用いた。この JNKIは、MAPキナーゼのシグナル伝達経路において、アポトーシスに関連する JNK を特異的に阻害することによって抗アポトーシス作用を発現すると考えられる。PTDである 11R に JNKI をつけた蛋白を、摘出した移植臓器である膵・腎に潅流したところ、各臓器内に蛋白が導入されたことが確認できた。これは、臨床応用を目指し、できるだけ臨床に近い形での蛋白導入を目指したもので画期的な成果であると考える。 今後は、実際に移植を行い、蛋白導入によってアポトーシスが軽減され、さらに虚血再潅流障害の軽減が得られるかを検討する予定である。 また、同時にラットを用いた同様の研究も行っており、同様に膵・腎組織内への蛋白導入が確認できた。最終的には、臨床応用を目指すため、大動物の研究を主体とするが、至適用量・時間などの検討において小動物での基礎実験が必要と考え、大・小動物での研究を平行して継続する予定である。
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