当初ウサギの乳腺組織内にRFA Cool-tipを刺入し、熱凝固実験を開始したが、(1)ウサギ乳腺が小さいこと、(2)皮膚からの距離が十分確保できない、などの理由でウサギでの実験は断念した。そこで、ブタの乳腺組織を用いて同様の実験を試みた。凝固部位におけるHE染色では、小葉構造が破壊され、上皮細胞の著明な空胞化を認めた。しかしながら、乳管組織への傷害は比較的軽微であった。凝固部位から離れた組織では小葉構造・乳管構造ともに保持されていた。熱凝固時間に関しては、3分・6分・9分のタイムコースを設定したが、平均の凝固される範囲が3分では25×12mm、6分では25×20mm、9分では40×22mmとなり、さらに、9分の熱凝固を行うと細胞の融解が観察されたため、6分の熱凝固が至適であると考えられた。熱凝固の後、マンモトームを用いて採取した組織の評価は、HE染色のみでは典型的な壊死像が観察されず、正確な残存腫瘍の有無の判定が困難であった。現在これに加えて、NADH染色・MIB-1染色を行い、腫瘍残存率を算定し解析を行っている段階である。また、熱変性を直接評価するためにHSP(Heat shock protein)47による免疫染色も行っているが、本法を用いると腫瘍組織に対する組織傷害がより詳細に観察できると予測される。今後、このデータを元にfeasibility studyおよび第II相臨床試験を実施し、早期乳癌患者に対する低侵襲治療の実現を目指していく。
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