研究概要 |
以下の3テーマについて研究し、最終的に肝切除中の出血と他家輸血の削減をめざした。それぞれの進捗状況を記す。 (1)術中自己血採取により肝離断中の出血量を減少させうるかをRCTにより検証する:生体肝移植のドナーを対象に目標80例の登録を完遂した。データを解析した結果、術中の自己血採取によって、肝離断中の出血は230mL(中央値)から140mLに有意に削減されることが判明した(P=0.034)。通常の肝切除でも離断中の出血が多い場合は、血液を一時的に採取し、離断後に戻すようにすれば、出血量を抑制できることが示唆された。この結果は英文論文にまとめ(Hashimoto T, Hasegawa K, et al.Annals of Surgery 2007;245:686-691)、2007/4/13に第107回日本外科学会総会で発表した(橋本拓哉、長谷川潔、他.肝離断中出血に対する術中潟血の有用性の検討:無作為化比較試験。 (2)LigaSureは肝離断の時間と出血量を減少させうるかをRCTにより検証する:肝切除患者を対象に目標の120例の登録を完遂した。結果を解析し、現在英文論文を作成中である。 (3)術前自己FFP貯血の安全性と有用性の検討:肝細胞癌に対する肝切除を予定され、ICG R15値15%以下、70歳以下を満たす患者を対象に前向き安全性試験を行った。現在、18例で3回にわたって自己FFPを採取し、うち15例の肝切除に使用した(残り3例は手術待機中)。18例で自己FFP採取に伴う有害事象はなかった。血清蛋白やアルブミン値は各採取後1週間で前値に回復した。15例で周術期に自己FFPを使用したが、とくに問題なく、14例で他家輸血が不要であった。同じ条件の肝切除症例で69%に他家FFP輸血が必要だったことを考慮すると、削減効果はあったと考えている。症例数を30例まで増やし、英文論文にまとめる予定である。
|