昨年度に引き続き、肝細胞癌患者の血清中に存在する自己抗体の検討を行った。 等電点電気泳動装置と水平式SDS-ポジアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)装置を用いた二次元電気泳動と、質量分析装置LC/MSD Trap XCTを用いたpeptide mass fingerprinting (PMF)分析によるタンパク質の質量分析検査にて、癌組織において有意に発現が増強するタンパク質を検出し、それに対する自己抗体が血中に存在するかを、肝細胞癌患者、ウィルス感染のない健常人、ウィルス感染があるが発癌していないキャリア患者、の3群に対してそれぞれイムノブロット法によって調べた。その結果、肝細胞癌患者血清中には健常者の血清と比較して3種類の自己抗体が増加していることが確認された。これらは、heat shock protein 70 (HSP70)抗体、peroxiredoxin (PDX)抗体、superoxidedismutase (SOD)抗体であることが判明し、そのうちPDX抗体はキャリアでも肝細胞癌患者と同程度発現していたが、HSP70抗体とSOD抗体は、コントロールとキャリアにはほとんど発現しておらず、肝細胞癌患者血清には有意を持って高発現していた。 この2つの自己抗体は、肝細胞癌の発癌や再発の診断マーカーになり得ると考えちれ、これらの抗体をチップ上に固定配列した簡易的診断キットの作成を検討することとした。
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