1. ヒトPSTI過剰発現マウスの作製 変異PSTIが遺伝性膵炎の原因遺伝子であることを証明するために、ラットエラスターゼ1プロモーター+ヒトPSTI遺伝子およびヒト変異PSTI(N34SおよびR67C)のcDNAをマウス受精卵に導入し、マウスラインを樹立した。これらのマウスではmRNAレベルでヒトPSTIの発現は確認されたが、蛋白レベルでの発現が確認できなかった。PSTI cDNAは250bpと非常に小さいために、このような現象が起きるのではないかと考え、各エクソン間にイントロンの一部(5'側200bp、3'側300bp)を挟み込むPSTI minigeneを作製し、再度マウスを樹立することにした。 2. PSTIによるオートファジー制御の可能性 オートファジーは細胞外からのシグナルによって、mTORを介して制御されていることが知られている。Psti欠損マウスの膵臓では過剰なオートファジーが誘導されることから、Pstiはいったん細胞外に分泌された後、再度細胞外からmTORを制御している可能性が考えられる。そこで培養細胞にPSTIリコンビナント蛋白を細胞外から加える実験を行った。膵癌細胞はPSTI蛋白によって、細胞増殖が促進されるが、細胞外のPSTIはEGFRを介して、細胞内シグナル伝達系に作用していることが明らかとなった(Molecular Cancer Research)。さらにPsti欠損膵ではmTOR蛋白が欠失していることも判り、PSTIがオートファジーの負の制御因子である可能性が示唆された(Current Enzyme Inhibition)。
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