研究概要 |
前年度までに解析した遺伝子のうち,細胞株での再現性を確認したところ,正常細胞株HET1Aと比較して,すべての食道癌癌細胞株での発現上昇が認められたCaveolin2に関して解析を進めた。 Caveolin1とcaveolin2はcaveolaeの主要な構成タンパクである。TE1-15の食道癌細胞株で,CAV1もCAV2も高発現を認めていた。臨床検体47例に関して,RTPCRによる発現定量と抗体を用いた免疫染色を施行した。RTPCRの解析では,癌部での発現は,非癌部の発現と比較して有意に高発現であった。(CAV1,p=0.0024,CAV2,p=0.0136)その他の臨床病理学的因子とは相関は認めなかった。免疫組織染色では,CAV1は,13/47(27.7%)で陽性であり,CAV2は22/47(46.8%)に陽性であった。CAV1とCAV2の免疫染色とT因子,Ly因子,V因子,分化度に重要な相関を認めた。CAV1がpositive症例はnegativeな症例より生存期間が短い傾向にあった。CAV2がpositive症例についてもnegativeな症例より生存期間が短い傾向にあった。これらの結果はCAV1とCAV2が重要な予後因子であり,食道癌治療のターゲットとなりうることを示唆していた。 さらにCAV1のRNAiを用い,食道癌細胞株におけるCAV1の発現を抑制し,治療に応用を目指したが,現在までにpositiveなdataは得られていない。今後さらに解析をすすめる予定である。
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