研究概要 |
(目的) 多くの悪性腫瘍の原因遺伝子は、家族性腫瘍の連鎖解析によって同定されてきた。食道癌では、掌蹠角化症の家系で高率に食道癌を発症するTylosisという家系が報告されている。連鎖解析により、17番染色体長腕(17q25.1)に原因遺伝子が存在することが示唆され、Tylosis Oesohageal Cancer(TOC)locusと命名されている。本研究は、LOC400621に存在する遺伝子について食道扁平上皮癌の原因遺伝子としての意義を解明するために、genetic/epigeneticな異常を解析するとともにその細胞生物学的意義を検証する。本研究は、食道癌発生のin vivoモデルとしてのノックアウトマウス作成前の予備実験として位置づけられる。 (方法) LOC400621から翻訳され,epigeneticな発現の変動のみられる遺伝子のtranscriptional start siteを,RACE法を用いて決定する。さらに発現変動を認めたRNAについては,蛋白質予測,抗体作成を行う.またプロモーター領域の解析についても行う. (結果) 作成した抗体と反応する蛋白質は認められなかった.転写mRNAがnon-coding RNAである可能性を考え,microRNAの中にホモロジー解析を行った.候補のmiRNAが一つ見つかった. (考案) LOC400621の標的は,non-coding RNAであるmiRNAである可能性が高まり,このmiRNAによる蛋白質の発現抑制が食道癌の発生進展に関与している可能性が示唆された.
|