研究概要 |
膵粘液性嚢胞腫瘍(Mucinous cystic tumor, MCT)と卵巣MCTは、いずれも肉眼的に巨大な多房性・単房性の嚢胞性腫瘍で、組織学的には粘液産生性の腫瘍細胞と、間葉性間質に支持されているという共通点を有する。今回の目的は、1. 膵MCTと卵巣MCTの発生進展における異同の比較検討、2. 膵MCTの発生進展機序、特に卵巣様間質の組織学的性格、起源の解明、3. 膵MCTが女性特有疾患である可能性と理由の解明。方法としては、両腫瘍を免疫組織学的に比較検討し、両腫瘍の病理組織学的異同を考察。検討項目は1. 膵MCTの卵巣由来としての可能性(正常卵巣組織との比較)2. 膵MCTの膵臓由来としての可能性(正常膵組織、IPMT、浸潤性膵管癌との比較) 平成18年度は膵MCT8例、卵巣MCT21例、正常卵巣10例、女性正常膵組織8例、膵癌女性例7例を、IPMT9例を集積し、細胞周期制御因子について検討し、両腫瘍におけるp27/kip1の共通点・相違点を見出した。さらに、平成19年は同症例を対象に女性性腺ホルモン関連マーカーに関して検討し、エストロゲン・レセプター(ER)、プロゲステロン・レセプター(PgR)、インヒビンαのいずれも、膵MCT・卵巣MCT両腫瘍において染色陽性となり、両腫瘍の類似性を示す結果となった。 平成20年度は、膵臓由来という側面から膵腫瘍のマーカーであるCA19-9とDUPAN2に対して検討を行った。CA19-9は両腫瘍に高率に染色陽性となった。一方、DUPAN2は膵MCTの40%に染色陽性となり、膵MCTの膵由来としての可能性が示唆された。また、研究期間の最終年度であるため、3年間の研究期間で得られた結果を英文誌に投稿、報告した。
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