本研究は、本学附属4病院にて行なう"早期胃癌に対する迷走神経温存胃切除術"に関する比較検討試験である。第二相試験におけるPrimary endpointは、"本術式の安全性(手術時間、出血量、合併症、術後在院日数)の検討"および"グルカゴン負荷テストによる迷走神経機能の温存効果の確認"であった。まず、研究を開始するにあたり附属4病院における施設間ならびに個人間格差について検討した。従来、早期胃癌に対する胃切除術は極めて標準的な術式であると考えていたが、その手術データと治療成績は附属病院間において明らかな差を認めた(第107回日本外科学会総会にて発表)。また、迷走神経の温存方法や適応についても術者間で隔たりがあった。本研究は迷走神経温存による臨床効果の是非を問う研究であり、迷走神経温存の手技自体が研究のEndpointに強く影響するため、試験開始前に手術手技と管理法を標準化するための本術式の詳細なビデオを作製した(第79回日本胃癌学会総会にて発表し、特に問題となりそうな"神経の温存の仕方"、"血管処理の仕方"については論文にて考察した)。また、"迷走神経機能の温存効果の確認"については、術後の患者さんに対してグルカゴン負荷テストを施行したが有意な差は認められなかった。本研究では第三相試験を予定していたが、以上の事項によりKick offが遅れており、現在、各施設ならびに個人間にて手術手技の認識ならびに適応の統一を図るために検討会を行っている。また、Primary endpointである"術後1年目の消化器症状(GSRS)の検討"のために必要な症例数の見直しをはかるために、術後早期胃癌患者500症例に対して、GSRS(およびSF-36)を用いた胃切除術後の消化器症状に関するアンケート調査を行った。現在、このデータについては解析中であり、今後、学会発表ならびに論文の作成を予定している。
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