研究概要 |
本研究は研究全体構想のうち「肺空気漏れ量を定量化するための非侵襲的連続モニタリングシステムの開発」を課題としている.研究は3年計画で,本年度は,研究計画申請書に示した実験群の中の「I.電磁振動式エアーポンプを模擬肺ろうとした医工学的実験を完了した. 電磁振動式送気ポンプを模擬肺ろうと見立てた胸腔ドレナージユニット回路を作成した.回路の途中に市販の胸腔ドレナージユニットを設置し,2枚のアルミ板センサーを気泡部の取り付け,模擬肺ろうとして気泡部を通過する気泡体積を静電容量方式で測定,その積算値から排出空気流量をリアルタイムに計測した.同回路内に気体用超音波流量計を設置し,排出空気流量を直接的に計測した.我々の開発した静電容量法による測定値と気体用超音波流量計の直接測定値と比較することにより,静電容量法による計測の正確性,ユニット個体別・測定環境別の誤差による再現性を明らかにした. 結果として,(1)静電容量測定値と気泡(肺ろう)の間隔は相関していており,連続流量測定が可能な技術と考えられた.(2)送気ポンプの流量別測定誤差は,低流量域では約6%、高流量域では約20%であったが,生体肺が行う呼吸流量域の誤は10%以下の誤差となった.(3)ドレナージユニットの個体差は認められず,持続吸引を行った場合の誤差も認めなかった. 以上より本法は,肺空気漏れ量という生体情報を心電図や動脈血酸素飽和度測定のように非侵襲的に連続測定できる初めてのシステムと考えられる.装置が比較的簡便であり,生体に非侵襲的であることからベッドサイドモニタリングの1つとすることが可能であることが確認された. 今後は動物肺ろうモデルを用いて測定し,呼吸運動や咳嗽,体動,ドレーンの位置を考慮した測定値の正確性の検証を行う.また,自然治癒症例の経時的減量の変化と肺ろう遷延例とを比較する.
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