申請者は、4500個のBACクローンを搭載したin-houseゲノムアレイを用いて、癌細胞株のゲノム解析を行っている。1つはゲノムコピー数解析であり、もう1つは、DNAメチル化領域の特異的増幅法であるMCA(methylated CpG island amplification)法を、BACアレイ上で展開することにより、癌においてDNAメチル化異常をきたす領域の網羅的探索法(BAC array-based MCA (BAMCA)法)である。 また、クロマチン免疫沈降法をBACアレイ上で展開することにより、特定蛋白のゲノム上の結合領域の網羅的探索法(ChIP on BAC-array法)を確立した。この方法は、生細胞内でゲノムとそこに結合している蛋白との間に架橋を形成し、目的の蛋白に対する抗体で免疫沈降し、回収したDNA-蛋白複合体からDNAを抽出して蛍光標識し、BACアレイにハイブリダイズするものである。 今回、ヒストンおよびDNAメチル化領域を探索する目的で、抗ヒストンH3K9メチル化抗体および、メチル化DNA結合蛋白質であるMeCP2に対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降法を行った。これをin-houseゲノムアレイによるChIP on BAC-array法を用いて解析し、ヒストンおよびDNAメチル化領域を検索した。 肺非小細胞癌細胞株の解析の結果、13q21.2領域に存在するPCDH20は、そのプロモーター領域が高頻度にメチル化を受けることにより発現抑制されていた。また、PCDH20を肺癌細胞株に強制発現させるとコロニー形成能が低下し、肺癌における新たな癌抑制遺伝子と考えられた(Imoto I et al.Caner Res 2006)。 以上より、研究目的は達成されたと考える。
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