これまでの研究により、4500個のBACクローンを搭載したin-houseゲノムアレイを用いて、癌細胞株のゲノム解析を行ってきた。1つはゲノムコピー数解析であり、もう1つは、エピゲノム解析としてDNAメチル化領域の網羅的探索法(BAC array-based MCA (BAMCA)法)と、クロマチン免疫沈降法をBACアレイ上で展開した蛋白結合配列の網羅的探索法(ChIP on BAC-array法)である。 抗ヒストンH3K9メチル化抗体および、メチル化DNA結合蛋白質であるMeCP2に対する抗体を用いたChIP on BAC-array法とBAMCA法を重ね合わせることにより、ヒストンおよびDNAメチル化により発現抑制を受ける癌関連遺伝子の解析方法を確立し、メチル化プロファイルを作製した。肺小細胞癌細胞株において高頻度に発現抑制されていたTSSCl (labo name)は、DNA脱メチル化剤である5-azadC処理により発現が回復した。CpGアイランドのDNAメチル化は発現低下と一致しており、メチル化により発現抑制される新規の肺癌関連遺伝子候補として解析を進めている。 一方、肺腺癌細胞株における14q11.2増幅領域において活性化を受ける標的遺伝子BCL2L2を見出した。BCL2L2はアポトーシス阻害因子であり、RNA干渉法により発現を抑制すると肺腺癌細胞株の増殖は抑制され、肺癌における新たな癌関連遺伝子と考えられた。 また、ChIP on BAC-array法により、癌に関わる転写因子E2Flを解析したところ、E2F1の既知の標的遺伝子を含まない領域が検出された。それらの領域内に座位し、プロモーターにE2F1の結合配列を持ち、E2Fl転写活性化される新規の標的遺伝子を同定した。 以上より、研究目的は達成されたと考える。
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