1.胸膜中皮腫細胞株樹立について 日本人患者胸水由来の悪性胸膜中皮腫細胞株を計4株樹立することに成功した。細胞株名は、ACC-MESO-1(61才女性、上皮型、アスベスト暴露歴なし)、ACC-MESO-4(59才男性、上皮型、アスベスト暴露歴あり)、Y-MESO-8A(60才男性、二相型、アスベスト暴露歴なし)、Y-MESO-8D(Y-MESO-8Aと同一患者)であり、後者2株は二相型胸膜中皮腫の同一患者に由来し、一方(Y-MESO-8A)は上皮型、もう一方(Y-MESO-8D)は肉腫型の形態を示した。 2.癌抑制遺伝子についての検討 (1)NF2 多くの文献上、胸膜中皮腫での変異が報告されている癌抑制遺伝子NF2であるが、今回樹立した細胞株中では、ACC-MESO-1でのみ変異を認めた。 (2)p16 INK4A 今回樹立した細胞株中、すべてにおいてp16 INK4A遺伝子領域にホモザイガス欠失を認めた。 (3)TP53 樹立した細胞株中に遺伝子変異は認めなかった。 3.癌遺伝子についての検討 樹立した細胞株において、癌遺伝子としてKRAS、NRAS、BRAF、EGFR、HER2を対象にDirect Sequencing法にて変異解析を行ったが、明らかな遺伝子変異は認めなかった。 4.cDNAマイクロアレーによる発現解析 同一患者由来で形態が異なる2細胞株、Y-MESO-8AとY-MESO-8Dについて遺伝子発現パターンの違いをcDNAマイクロアレー法にて検討した。その結果、2細胞株間でその発現量が5倍以上異なる43遺伝子を同定することができた。
|