【対象・方法】九州がんセンター呼吸器科で1992年から2005年に手術した非小細胞肺癌で術後再発に対して化学療法を行った症例のうち、術前後の補助療法を施行した症例、再発巣の評価可能病変に放射線治療を行った症例、イレッサを使用した症例は除外し、59例を解析対象とした。切除標本癌組織中のSkp2、p27、JAB1の発現を免疫組織学染色にて評価し、初回治療として使用した抗がん剤の種類、その最大効果、および再発後生存日数との関連を解析した。 【結果】Skp2発現減弱、増強はそれぞれ29例、30例、p27発現減弱、増強はそれぞれ9例、50例、JAB1発現減弱、増強はそれぞれ4例、55例であった。各タンパク発現の強弱と、細胞周期非依存性薬剤(シスプラチン、カルボプラチン)、M期依存性薬剤(タキサン、ビノレルビン)、S期依存性薬剤(ゲムシタビン、FU、イリノテカン)の腫瘍効果に相関は認めなかった。また、各タンパク発現の強弱と再発後生存期間にも相関は認めなかった。しかし、Skp2発現の増強した症例に関して細胞周期非依存性薬剤を使用した症例が、同薬剤を使用しなかった症例に比較して有意に再発後生存日数が長く(P=0.0466)、さらにp27発現の減弱した症例では細胞周期非依存性薬剤を使用した症例が、同薬剤を使用しなかった症例に比較して有意に再発後生存日数が長かった(P=0.0005)。また、その他の薬剤の使用の有無に関しては再発後生存日数と相関を認めなかった。 【考察】p27、Skp2による細胞周期制御の低下した癌には、細胞周期非依存性薬剤が有効であることが示唆されると判断した。 【展望】平成19年度は、さらにp21/p53系の細胞周期調節機構の解析や細胞株によるin vitroの解析を進め、化学療法薬剤選択のプロスペクティブ解析へと発展させる予定である。
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