「研究の目的」 神経膠腫検体を用いて免疫組織化学的な検討を行い、腫瘍幹細胞の分布、増殖、浸潤能について解析を行い、治療に対する反応性、播種の有無などの臨床情報との相関を明らかにする。 「本年度の研究実施状況」 膠芽腫、乏突起細胞腫検体を用いた免疫組織化学的な腫瘍幹細胞の分布についての解析 当科で過去に摘出術が施行された膠芽腫症例のパラフィン切片、凍結切片を用いて腫瘍幹細胞を特異的に検出すると報告されている抗CD133抗体にて免疫組織化学的検討し腫瘍幹細胞の分布について解析を試みた。しかしパラフィン切片では全く染色が得られず、凍結切片では非特異的な染色が強く臨床経過との相関を解析するに至らなかった。そこでCD133に比べ腫瘍幹細胞の同定という点からは特異度が低下するものの、腫瘍幹細胞に発現していると報告されているNestinに対して免疫組織化学的検討を行った。播種と腫瘍幹細胞の関連性があると仮説を立て、対象症例は膠芽腫ではなく、播種を高率に起こすとされている乏突起細胞腫50例とした。この症例の中には9例(18%)の播種再発例が含まれ、腫瘍幹細胞の分布と播種について相関を解析した。結果、Nestinをび慢性に発現している乏突起細胞腫は統計学的有意差をもって高率に播種による再発をおこし、生存に関しても予後不良であることが判明した。乏突起細胞腫では第1染色体短腕、第19染色体長腕の欠失のない症例、p53を発現している症例は予後不良とされているがNestinをび慢性に発現している症例では両因子が陽性であった。これらの結果から乏突起膠腫の中で予後不良群とされる症例では腫瘍幹細胞が病変の進展に関与している可能性が示唆された。
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