研究概要 |
「研究の目的」 もやもや病の病態解明、術式選択、血管新生療法の開発に主眼をおき、虚血脳における血管新生との関与が推測される血管新生因子や細胞外マトリックス分解酵素(MMPs)発現を解析する。血行再建術後の臨床像と術後脳血流ならびに脳実質と脳血管の評価を行い、上記蛋白発現との関連を明らかにする。最終的にはラット虚血モデルを用い、候補蛋白導入による血管新生を含めた術後変化とこれら因子との関連を明らかにし、血管新生誘導療法への応用に基礎を確立することを目的とする。 「本年度の研究実施状況」 (1)もやもや病患者髄液中の血管新生関連蛋白ならびにMMPsの網羅的解析 平成18年度に続きもやもや病患者30人の患者から血清を採集した(コントロールとして健常人からも採集)。ELISA法を用いて血清中のMMP-9に加えて今年度MMP-2, TIMP-1, TIMP-2の発現動態も検討した。結果として、MMP-9のみもやもや病患者において健常人と比較して有意な上昇を認めた。さらにもやもや病血行再建術中にくも膜組織を採集しMMP-9に対する免疫組織染色を行い、健常人と比較して有意な発現上昇を認めた。 (2)もやもや病血行再建術を行った連続20側において術後急性期の脳血流(SPECT)と脳血管・脳実質の形態学的評価(MRI)を行った。術後3ケ月に脳灌流MRIにて術後血管新生と脳循環動態を評価した。もやもや病に対する血行再建術により脳虚血発作の消失、術後3ケ月のバイパスなどを介した血流改善が見られた。一方、術後急性期には吻合部に限局した血流上昇による一過性神経脱落症状や、稀に出血性変化を呈する症例が約25%に見られた。統計学的解析により成人例、出血発症例において症候性過灌流を呈しやすいことを初めて明らかにした。 (3)ラットを用い間接血行再建術を模擬した実験系を立ち上げた。慢性虚血モデルにおける間接血行再建術による血管新生の再現性が得られなかった。
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