SDラット(雄210-250g)を用いて永久両側総頚動脈閉塞による慢性脳虚血モデルを作製し、術後2週、4週、6週、8週の4群におけるcorpus callosumを抗NG2抗体(オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)のマーカー)及び、抗GST-π抗体(成熟オリゴデンドロサイト(OLG)のマーカー)を用いた免疫組織化学染色にて評価し(n=6)、またミエリンについて、抗MBP抗体(ミエリンのマーカー)を用いwestern blotによって評価した(n=3)。認知機能評価は、各群のsacrifice前5日間の水迷路試験に行った(n=10-14)。運動機能評価は、Rotarod試験を用い、術前連続した3日間と術後1、3、5日及び1-8週目まで各週行った(n=6)。 免疫染色の結果、NG2陽性細胞数は、4週で有意に増加し(P<0.05)、その後も増加傾向を示した。GST-π陽性細胞数は、2週では有意に減少し(P<0.05)、その後増加の傾向にあった。Western blotの結果、MBPは虚血群間において4週以降減少傾向が見られた。水迷路試験の結果、虚血群はSham群に比べ有意に成績が低下し、虚血群間では6週が最低であった(P<0.05)。Rotarod試験の結果、虚血群はSham群と比べ明確な差は見られなかった。 以上のことからOLGの減少のピークは術後2週、OPCの増加のピークは4週であった。またOLGは4週にはSham群と同程度にまで増加を認めたことから、OLGの再生が生じた可能性が示唆された。一方ミエリンは術後減少傾向を示し、また脳機能障害においても、運動機能低下は認めなかったものの認知機能低下を認めた。以上より、組織学的にOLGは減少後回復を認めたものの、ミエリンの減少と認知機能障害は残存しており、脱髄が認知機能障害に関与している可能性が示唆された。
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