SDラット(雄210-250g)を用いて永久両側総頚動脈結紮による慢性脳虚血モデルを作製し、術直後、術後2、4、6、8週において脳血流の測定を行った(n=6)。術後2、4、6、8週において灌流固定後に脳スライスを作成し抗NG2抗体(オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)のマーカー)及び抗GST一π抗体(成熟オリゴデンドロサイト(OLG)のマーカー)を用いて免疫組織化学染色及び蛍光2重染色を行った(n=6)。術後4週目において、抗BrdU抗体(増殖細胞のマーカー)と抗NG2抗体を用いて蛍光2重染色を行った(nニ3)。術後4、6、8、12週において、抗MBP抗体(ミエリンのマーカー)を用いてウエスタンブロットを行った(n=6-7)。術後2、4、6、8、12週において水迷路試験により認知機能評価を行った(n=10-14)。術後1、3、5日及び1-8週目まで各週、ロータロッド試験により運動機能評価を行った(n=6)。 脳血流の測定の結果、術直後に約50%の低下を示した後、回復傾向を示した。免疫染色の結果、NG2陽性細胞数は4週で有意に増加し(P〈0.05)、その後も増加傾向を示した。GST一π陽性細胞数は2週では有意に減少し(P〈0.05)、その後増加の傾向にあった。蛍光2重染色の結果、NG2陽性細胞とGST陽性細胞及びBrdU陽性細胞とのマージは増加傾向を示した。ウエスタンブロットの結果、MBPは有意に減少し6週で最低であった(P〈0.05)。水迷路試験の結果、成績が有意に低下し、6週が最低であった(P〈0.05)。ロータロッド試験の結果、明確な低下は見られなかった。 以上より組織学的にOPCの増加及びOLGの減少後回復を認めOLGの再生が示唆されたが、ミエリンは減少を示した。また認知機能低下がミエリンと同様に残存していたことから、脱髄が認知機能障害に関与している可能性が示唆された。
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