本研究では骨肉腫細胞にさまざまな刺激を加えて自己分泌型細胞運動刺激因子(autocrine motility factor以下AMF)の発現量の変化を調べた。悪性腫瘍に対する治療に対して様々のものがあるが近年、温熱療法の有用性が報告されている。そこで骨肉腫細胞に温熱刺激を加えその時のAMFの発現量の変化をまず調べた。AMFは細胞に対してストレスになる刺激が加わるとその発現が培すことが知られている。一例として低酸素刺激によりAMFの発現が増すことが報告されている。温熱刺激によりAMFの発現が上昇することが予想されたのだがこの仮説に反してAMFの発現は減弱した。同じ細胞株に対し骨肉腫治症に用いられるメソトレキセートを添加したがAMF発現の減弱は認められなかった。これらの実験結果を元に細胞をコントロール群、メソトレキセート添加群、温熱刺激群に分けDNAマイクロアレイにて遺伝子の発現変化を比較し、温熱刺激に特異的と考えられる遺伝子をいくつか検出した。現在これらの遺伝子の発現量の変化をリアルタイムPCRで解析中である。 当教室では1990年代からpositron emission tomography(以下PET)を用いて骨軟部腫瘍のエネルギー代謝、特に糖代謝につき解析を行ってきた。AMFは細胞内では解糖に必須の酵素phosphoglucose isomerase(PGI)と相同であることが知られているため、今までのPETのデータとAMFを含めた糖代謝、糖輸送に関連する分子群の発現を比較した。これは免疫染色とパラフィン切片から得られたmRNAを用いて解析を行った。このうち糖代謝、輸送に関連するいくつかの分子群はPETで高値となった症例で高発現を認めた。またある種の腫瘍細胞に特異的に発現が認められる糖代謝関連分子も確認された。
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