研究概要 |
変形性関節症に代表される軟骨変性を正確に評価することは、現在の画像診断法では限界がある。関節軟骨の画像診断に関する研究はいくつか報告されているが、投影法による画像診断法の報告はほとんどない。大型放射光施設SPring-8(BL20B2)、および高エネルギー加速器研究機構(PF,BL14B)で実験を行った。暗視野法とは、屈折コントラスト法を応用したX線画像である。被写体にX線を照射し、物体で屈折したX線を回折アナライザーによって分離し、屈折X線だけで画像化する方法である。通常のX線画像(吸収コントラスト)では写らない被写体を撮影することが可能である。解剖体御遺体から摘出した皮膚、軟部組織が付着したままのPIP関節、肩関節、膝関節を用いて、表面入射型CCD(浜松ホトニクス社)を用いて、透視撮影、断層撮影を行った。今までの原子核板を用いた撮影で、指、肩、膝の各関節軟骨の鮮明な撮影が可能であった。原子核板による撮影は高い解像度であるが、現像に時間がかかるため、条件設定(X線照射角度や撮影条件など)にある程度の時間が必要であった。また、コストが高い点も問題となる。この欠点を改善するために、透視撮影法を開発した。このシステムを用いることで、条件設定がリアルタイムで可能となり、より良い軟骨の画像がすばやく撮影可能となった。また、断層撮影法の開発も同時に行ってきており、この透視撮影法を用いることで、大幅に撮影時間を短縮することが可能となった。透視撮影により関節軟骨の画像がリアルタイムで得られるため、関節軟骨の動的解析にも有用なシステムであると考えている。さらに、断層撮影にも有用なシステムであり、軟骨変性の局在が画像診断可能と考えられる。現在、このシステムを利用することで、関節軟骨のCT撮影法に開発に取り組んでいる。
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