研究概要 |
本年度は研究計画に従い、以下の研究を行い、得られた研究成果を学会発表した。 免没不全ラット(F344/nude rat,12W)アキレス腱損傷モデルに対する末梢血由来CD34陽性細胞移植及びその効果の評価 移植細胞には、十分な細胞数を得るためにG-CSF動員末梢血由来ヒトCD34陽性細胞を購入し使用した。移植細胞の純度の確認及びキャラクタライゼーションのためセルソーターによる解析を行った。移植細胞の純度は98%以上でその他のマーカーを用いた検索においてはAC133の発現を約40%に認めた。 次に雌8週齢(約200g)のヌードラットの左アキレス腱を露出し中央部で切離後ナイロン糸にて縫合した。皮膚を縫合後、リン酸緩衝液に懸濁したCD34陽性細胞を(1x10^5 cells/50μ PBS)腱縫合部に局所投与した(移植群)。リン酸緩衝液のみを投与した群をコントロール群とした。 移植後1週における肉眼的所見ではコントロール群では損傷部は陥凹を認めたが、移植群では厚い組織で覆われていた。Masson Trichrome染色においてもコントロール群では脆弱なコラーゲン配列を認めるのみであったが、移植群ではコラーゲン線維を豊富に認め、正常に近いコラーゲン配列を示していた。また、抗Type I collagen抗体による免疫染色では、コントロール群で染色性は乏しいものの、細胞移植群では非常に高い染色性を示していた。損傷部より抽出したmRNAの発現解析ではTGF-beta, VEGF-A, CXCR4の発現は移植群において有意に高値を示していた(P<0.05)。さらに、力学的評価としての引っ張り強度は細胞移植群で17±3.5N、対照群10.4±1.4Nと移植群が有意に高値を示していた(P=0.002)。以上よりヒト末梢血由来CD34陽性細胞によりラットアキレス腱の再生促進が確認された。以上の結果は21回日本整形外科学会基礎学術集会及び53rd Annual Meeting of the Orthopaedic Research Societyで報告した。 19年度は移植したヒト細胞の血管、腱細胞などへの分化を組織学的に証明し、CD34陽性細胞による腱再生促進効果の作用機序解明を目指す。
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