筋線維タイプは収縮特性から速筋と遅筋に大別され、持久性トレーニングや長期臥床で、筋線維タイプの移行が生じる。しかしながら、筋肉が直接損傷された場合の筋線維タイプ移行に関する報告はみられない。本論文では骨格筋損傷後の筋線維タイプ移行を経時的に調べ、さらに転写調節因子の1つで、遅筋形成に関与するperoxisome proliferators-activated receptor(PPAR)-gammma coactivator-1 (以下PGC-1)と筋線維タイプ移行との関係について検討した。 5週齢のマウスを用い、ひらめ筋に1μ1のcardiotoxin(CTX)を注入して骨格筋損傷モデルを作成した。CTX注入後2、4、8週後に筋組織を採取し、myosin heavy chain fast(fMHC)、myosin heavy chain slow(sMHC)、PGC-1に対する抗体を用いて、蛍光免疫染色およびWestern blotで各サンプルの解析を行った。 fMHC、sMHCを用いた蛍光免疫染色にて、筋線維タイプは速筋、遅筋、および両者の中間型ともいえる混合型に分類できた。CTX注入後、経時的に速筋は減少、遅筋は増加した。混合型は2週後まで増加し、その後減少した。以上より、骨格筋損傷後に筋線維タイプが速筋から遅筋に移行することが示された。Western blotでは、CTX注入後fMHCに変化はなかったが、sMHCとPGC-1は経時的に増加していた。蛍光免疫染色でPGC-1は再生骨格筋の中心核に発現していた。中心核を有する再生骨格筋の筋線維タイプは、経時的に速筋と混合型が減少、遅筋が増加していた。PGC-1は転写調節因子で、遅筋形成に関与しているので、骨格筋修復過程の中心核で働き、速筋から遅筋への移行を促進しているものと考えられた。
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