研究概要 |
(1)当講座においてI型コラーゲンプロモーターより骨芽細胞特異的にBcl-2を発現させたトランスジェニックマウスを作製し、5週齢の時点で尾組織からRNAを抽出しノーザンブロットを行った。導入遺伝子の発現の強弱により2つの系統のマウスを樹立した。強発現をN2マウス、弱発現をN3マウスとし、形態学的解析をおこなった。 (2)週齢を追ってN2,N3マウスの大腿骨のX線解析を行った。N2マウスは若齢時、野性型マウスに比べ体が小さく、骨折を起こす個体もみられた。10週齢時のX線、μCT、pQCT解析の結果、N2マウスの大腿骨の骨量は野生型マウスと比較して減少しており、さらに石灰化度の低い骨であることが判った。N3マウスでは骨折を起こす個体はみられず、野生型マウスと比較して骨量が有意に増加していた。4ヶ月齢、6ヶ月齢時のμCT解析では、N2マウス、N3マウスとも野生型マウスと比較して有意に骨量が増加していた。 (3)BrdU取り込み実験の結果、N2,N3マウスの若齢時において骨芽細胞増殖が著明に亢進していた。 (4)ノーザンブロット、in situハイブリダイゼーションによって骨芽細胞マーカー遺伝子の発現を調べた結果、N2マウスでは骨芽細胞の分化が抑制されておりN3マウスにおいても軽度な分化抑制が認められた。 (5)10週齢時の骨形態計測よりN2マウスでは野性型マウスに比べ骨芽細胞数が有意に増加していたが、骨形成速度、骨石灰化速度には変化がなかった。 (6)若齢時のN2,N3マウスの骨組織では骨細胞数が著明に増加しており、それらは形態的に未熟であった。未熟な骨細胞は週齢を追って観察すると死滅し、空洞化した骨小腔の内部にはTUNEL陽性の骨細胞の一部が残存することから、骨細胞はアポトーシスにより死滅したと考えられた。この骨細胞の死滅の度合いは強発現のN2マウスの方が強い傾向であった。
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