「内側視床核-前帯状回」経路は、電気生理学的な検討が可能であると文献で確認されている、数少ない脳内疼痛伝達経路の一つである。平成18年度は、過去の文献に基づいて、この経路の同定ならびに基本的なシナプス応答についての確認を行なった。ラットを気管挿管し、ハロタン麻酔下に内側視床核に刺激電極を、前帯状回に記録電極を挿入し、特徴的な波形(刺激強度依存性の興奮性シナプス後電位ならびに抑制性シナプス後電位)を確認することができた。また、この経路における2連刺激による短期シナプス可塑性の形成も確認することができた。さらに、このようなシナプス応答に対する疼痛の関与についても検討を行なった。ハロタン麻酔下で急性疼痛(趾へのformalin注入)を生じさせると、興奮性シナプス後電位が抑制された。このことから、「内側視床核前帯状回」におけるシナプス応答が疼痛と関連することが示唆された。従って、「内側視床核-前帯状回」経路は、疼痛を評価する電気生理学的基盤となりうることが確認された。 本実験の最終目標は、神経因性疼痛における「内側視床核-前帯状回」経路での変化を確認し、この変化への抗うつ薬による修飾を検討することである。今年度の目標として、1)急性疼痛ではなく、神経因性疼痛モデルにおける麻酔下での電気生理学的検討、2)同様に神経因性疼痛モデルにおける非麻酔下での検討、ならびに3)抗うつ薬による修飾について検討する予定である。
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