【目的】デクスメデトミジン(Dex)と低体温の併用療法の脳保護作用を検討する。 【方法】雄SDラットをハロタン麻酔下に尾動脈、大腿静脈、頚静脈を確保し、右総頚動脈に閉塞用の糸をかけ、右頭頂部に血流計、右側頭筋に体温計を装着した。ハロタンを中止し、酸素-亜酸化窒素、フェンタニル25μg/kg/hrの持続投与で麻酔維持した。実験群は4群とした。対照(C)群(n=9):側頭筋温37.5℃・生食1ml/kg、低体温(H)群(n=10):35.0℃・生食同量、Dex(D)群(n=10):37.5℃・Dex 100μg/kg、併用療法(DH)群(n=9):35.0℃・Dex同量。薬物の腹腔内投与30分後、脱血で平均血圧を40mmHgにし右総頚動脈を閉塞させた。20分後、頚動脈閉塞解除と返血を行い、体温を60分間維持した後、復温し覚醒させた。虚血1、2、3日後に神経学的検査(NDS)を行った。3日後パラホルムアルデヒドで脳灌流固定後、脳冠状切片にヘマトキシリン-エオジン染色を行い、光学顕微鏡で右海馬CA1細胞の生存率を調べた。統計はSteel-Dwass検定と分散分析を用い、p<0.05を有意差ありとした。データはNDSを中央値、細胞生存率を平均±標準偏差で示した。 【結果】虚血1日後NDSに有意差は認められなかった。2日後はC、H、D、DHがそれぞれ4、1、2、2でH、DHがCより低く、3日後は4、1、2.5、1でDHがCより低かった。CA1細胞生存率はそれぞれ13.0±26.7%、58.5±30.8%、51.9±40.5%、72.0±10.5%で、H、D、DHがCより高かった。 【結語】Dexおよび低体温はそれぞれ脳保護効果を示した。併用療法による保護作用の増強は、虚血3日後のNDSでは認められたが海馬CA1細胞の生存率では認められなかった。
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