研究概要 |
1.平成18年度に得られた研究知見:平成18年度研究プロトコルに従い、健康被験者に実際の痛み刺激は与えず、痛そうな(痛みを連想させる)画像を見て自分の痛みを想像してもらい、そのときの脳活動を計測し、恐怖感情と安静感情の脳活動と比較した。結果、自分の痛みを想像してもらったときは、複数の痛み関連脳部位(pain matrix)の有意な活性化を認め、あたかも実際の痛み刺激を与えられたかのような脳活動を示した。具体的には、前帯状回後部(posterior part of the anterior cingulate cortex : ACC)、島前部、第二次体性感覚野、後部頭頂葉、小脳部位の有意な血流増加を認めた。このことにより、末梢からの侵害刺激(ボトムアップ)がなくとも、痛みを想像することによって大脳の痛み関連領域の活性化をトップダウンで認めることを示した。さらに、痛みの想像と恐怖感情では共通の活動脳領域(ACC)があることも示した。(Ogino Y ; Nemoto H, Inui K, Saito S, Kakigi R, Goto F. Inner Experience of Pain : Imagination of Pain While Viewing Images Showing Painful Events Forms Subjective Pain Representation in Human Brain. Cerebral Cortex 2007;in press.) 2.平成18年度に購入した刺激装置、表皮内電気刺激方法(日本光電製)を、脳磁図システム(当病院内地下1階に設置)を用いて、健常者におけるカプサイシンクリームの痛覚伝達に対する検討課題を実施中。これまで、得られたdataから、カプサイシンクリーム塗布部はVisual Analogue Scoreの上昇とともに、脳の痛み関連領域の活動も上がっており、予想した結果と異なっている。従来の報告では慢性期の報告しか無く、今回の急性期の結果は非常に興味深い。健常人に対して使用予定のカプサイシンクリームは臨床の外来診療で処方しているものを用いている。
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