リドカインに代表される局所麻酔薬は、脊髄レベルでの疼痛制御のため、臨床でよく使用されている薬である。局所麻酔薬の作用は、末梢で投与された場合は、Naチャンネルブロッカーであることは、よく知られているが、脊髄くも膜下腔、硬膜外腔など、脊髄をターゲットに投与された場合は、より複雑で脊髄疼痛制御機構において、MAPKの役割が解明されていない。今回、脊髄後角ニューロンでのMAPKのーつであるERKの活性を、ラットの脊髄を用いて検討した。カプサイシンによりERKの活性が生じることがわかっているので、侵害刺激の一つとして用いた。局所麻酔薬をカプサイシンと一緒に投与することで、カプサイシンによるERKの活性を抑制するかを、リドカインだけでなく、各種局所麻酔薬を用いて、検討した。局所麻酔薬としては、リドカイン、ブピバカイン、テトラカイン、ロピバカイン、レボブピバカインを用いた。過去に我々は、ブピバカインが、カプサイシンによるERKの活性を抑制し、その効果は、細胞外からのカルシウムの流入をブロックすることであると、結論した(Yanagidateら、Anesthesiology、2006)。今回の結果は、使用したすべての局所麻酔薬(2mM)において、カプサイシンによるERKの活性を抑制したが、リドカインのみ、コントロールレベルまで抑制されなかった。リドカインのみ、濃度を5mMまで増加させると、コントロールレベルにまで、抑制された。なお、各種局所麻酔薬の単独では、コントロールと比べて有意な差はみられなかった。脊髄後角ニューロンにおいては、各種局所麻酔薬は、カプサイシンによるERKの活性を抑制することが解明された。(658文字)
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