ヒスチジンの脊髄虚血及び脳虚血に対する保護効果を検討した。 家兎の腹腔内ヒスチジン1000mg/kg投与で、血中濃度は、投与前:98. 5nmol/ml、30分後:10556. 9 nmol/ml、60分後:11371.6 nmol/ml、120分後:7784. 6 nmol/mlであった。 ヒスチジン500mg/kgまたは1000mg/kg(虚血90分前腹腔内)投与し、腎動脈下腹部大動脈遮断(13分間)で脊髄虚血を作成した。全例対麻痺をきたし、再潅流1〜3日目に死亡した。次にヒスチジン500mg/kg(60分間持続静注、虚血90分前に投与終了)投与し、同様に脊髄虚血を行った。これらも全例対麻痺をきたし、再潅流1〜2日目に死亡した。ヒスチジンの脊髄虚血保護効果はみられず、全身状態の不良化や対麻痺に伴うストレスの増強が認められた。 種差とモデル差を考慮し、ヒスチジンが脳虚血に対する保護作用を持つとの報告があるので、ラット前脳虚血モデル(虚血8分、両頚動脈クリップ+平均動脈圧50mmHg)で検討した。ヒスチジン1000mg/kgを腹腔内に虚血1時間前、再潅流6時間後、24時間後、48時間後に投与した。再濯流7日後、対照群では海馬Cal領域の正常神経細胞は殆どみられないのに対し、ヒスチジン群では約50%の神経細胞が生存した。 家兎脊髄虚血では保護効果がなく、脳虚血に対しては神経保護効果がみられた。種の違いか、臓器による違いの可能性が考えられる。ただし、ヒスチジン投与は全身状態の不良化や麻痺に伴うストレスの増強をきたすことが明らかになり、全身的影響を軽減する工夫が必要で、至適な投与量・方法の更なる検討が必要と考えた。
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