脳浮腫は頭部外傷、脳血管障害、脳腫瘍など様々な病態に随伴して発症し、しばしば致命的となるにもかかわらず、依然として治療法は浸透圧利尿薬の投与や外減圧術などの対症的なものに限られている。また、脳浮腫の発生機序でさえ十分には解明されていなかった。水チャネルであるアクアポリン4(AQP4)は、脳において発現し、水の移動や脳脊髄液の産生・吸収に関与している。申請者は、初期実験により、APQ4機能が低下すると細胞が脆弱化する可能性を発見した。 本年度の成果を以下に示す。 (1)培養アストロサイトを用いた低酸素障害モデル系の作成 細胞障害時のAQP4の機能解析や薬物のスクリーニングなどに応用するために、低酸素による簡便な細胞障害モデルを作成した。アストロサイトをラット脳より単離・培養し、大気コントロールチャンバにより低酸素負荷をかけることで細胞障害を引き起こした。短時間で効率よく細胞障害が起こるモデルが完成した。 (2)RNAiを用いたAQP4ノックダウン培養細胞株の確立 培養アストロサイトにAQP4 mRNAを阻害するRNAiを遺伝子導入し、AQP4の発現を低下(ノックダウン)させた培養細胞株(cell line)の構築をめざした。数種類のRNAiを設計・作成し、一時的な遺伝子導入を試みた。効率よく遺伝子導入を行うことができる条件は確立できた。現在、一時的な遺伝子導入を行ったアストロサイトにおいて、効率よくノックダウンできる塩基配列の選択を行っている。今後、AQP4ノックダウン培養細胞株の確立を行っていく予定である。
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