研究課題
筆者は、急性肺損傷およびARDSの発症にHMGB1が関与し、肺傷害性に働くこと、LPS投与による急性肺損傷モデルマウスに抗HMGB1ポリクローナル抗体を同時に経気管投与すると、肺傷害が有意に軽減することを示した(いずれもAm J. Resp Crit Care Med171 : 1310-1316, 2005)。平成18年度には、HMGB蛋白に対する様々なモノクローナル抗体を6種類作成して、急性肺損傷に対する抗体の有効性の評価を行ったが、過去の文献的にはTNF放出能が最も高いとされる部位をエピトープとする抗体は、逆に肺傷害を悪化させる結果となった。平成19年度はその結果を検証すべく、さらに認識するエピトープの異なる10種類のモノクローナル抗体を作成し、LPSと同時にマウスに気管内投与を行い、肺傷害の程度について検討を行った。しかし、データのばらつきはあるものの、やはりHMGB1により特異的な交代ほど、肺傷害軽減効果が高く、HMGB2に特異性が高い抗体は肺傷害をさらに悪化させた。この結果からHMGB2はLPS投与急性肺損傷モデルにおいては、肺保護的に作用している可能性が強く示唆された。本年度は、HMGB1およびHNGB2の肺における生理的役割を調べるためこれまでに作成したモノクローナル抗体を健常マウスに単独投与して検討した。しかし、モノクローナル抗体を気管内投与したモデルは、程度の差こそあれ、急性肺損傷を惹起し死亡するケースが目立つ結果となった。どの抗体も、投与量を増やせば死亡する割合が増加する傾向にあった。HMGB蛋白は、HMGB1, HMGB2共に生命維持のために重要な役割を果たしていることは示唆されたが、これ以上のメカニズムの解明を行う手段が無く、生存期間の延長をはかるため、人工呼吸を行ったとこる、死亡率の減少は図れなかったが、ATPが肺損傷に重要な役割を果たしていることが分かった。以後モデルを人工呼吸モデルマウスに変更し、そのメカニズムの解明を行い、P2Y受容体とATPの肺損傷との関連を検討した。
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Respiratory Research 79
ページ: 9
Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 295
ページ: 566-574