研究概要 |
【目的】線維筋痛症や顎関節症などの筋肉の痛みに性差が存在することがしられていることから、卵巣摘出ラットを用いて性ホルモンと筋痛(遅発性筋痛)の関係を検討した。 【方法】実験にはSD系ラット18(雄6匹,雌12匹,250-300g)を用い、雌ラットはさらにコントロール群(n=6)と卵巣摘出群(n=6)に群分けした。運動負荷は、各群ともペントバルビタール麻酔下でラットの脛骨神経を絶縁鍼電極にて電気刺激し(40Hz,10s)、.強縮した腓腹筋を徒手的に、引き伸ばす運動(伸張性収縮運動)を20分間3セット行った。また、評価に関しては覚醒下にて皮膚の閾値をvon Frey test[VET]で、また筋肉の閾値をRandall-Selitto test[RST]でそれぞれ評価した。なお、卵巣摘出ラットに関しては実験の1週間前にペントバルビタール麻酔下で卵巣を摘出し、膣から得られるスメア像に性周期がないことを確認した後実験に用いた。 【結果】運動負荷前の雄ラットとコントロール雌ラットの閾値を比べたところ、VFTには変化が見られないが、RSTに関しては雄に比べて雌ラットで閾値が低い傾向にあったた,。また、コントロール雌ラットでも、RSTは性周期により異なり、特に発情期で閾値が低い傾向にあった.しかしながら、卵巣摘出雌ラットでは、コントロール雌ラットに一比べてRSTの閾値は高く、雄ラットとほぼ同じ閾値であった。一方、腓腹筋に対して運動負荷を行うと、雄ラット・コントロール雌ラットともに運動負荷1日後にRSTの閾値は最も低下したが、卵巣摘出雌ラットでは運動負荷2日後が最も低下し、7日後には元も値に回復した。 【考察】正常の雌ラットは雄ラットのよりRSTの閾値が低く、また卵巣摘出によりRSTの値が上昇したことから、筋肉の閾値にはエストロゲンが影響を与えている可能性が考えられた。
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