インフォームドコンセントの得られた腎癌患者の摘出標本より採取した凍結組織を、非腫瘍部、腫瘍部ともに保存状態が良好で予後の追跡可能な67例、134検体用意した。まずはそのうち42検体について、そのRNAを抽出し、その腫瘍部、非腫瘍部におけるインターフェロン誘導性ケモカイン、およびそのレセプターのmRNAの発現状況に付き解析を行うこととした。抽出したRNAについてRNA integrity numberを計測しRNAの質的評価を行い、計測に不適切と思われる6例を除外した後、ケモカインの発現につきreal time RT-PCRによる解析を行った。検討したケモカインは血管新生を調節するMig、IP-10、I-TACおよびそれらのレセプターであるCXCR3である。以前の研究でこれらのケモカイン、およびレセプターの発現量が腎癌腫瘍部で上昇していることを報告した(Cancer.2005;103:258-267)が、症例数が少なく、臨床上の諸データとの比較検討が困難であった。今後は症例数を増やしケモカインの発現上昇と、臨床上のデータとの関係について解析を進める予定である。また、これらケモカインの負の調節因子であるRGS5の発現が腎癌腫瘍部において発現しており、非腫瘍部ではほとんど発現していないことを発表したが(J Pathol.2004;203(1):551-8)、RGS5とインターフェロン誘導性ケモカイン、およびそのレセプターの発現については全く解明されていないため、RGS5の発現量についても解析を行い、今後臨床上のデータ、およびケモカイン発現量との関係について検討する予定である。
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