研究概要 |
平成20年度における研究成果は以下のとおりである。 TGF-βスーパーファミリーは発生、分化、腫瘍化をはじめ様々な状態で細胞内情報伝達に関与していることが知られており、組織の線維化とその抑制についても重要な役割を果たしていることが明らかにされ報告されている。我々は膀胱線維化におけるTGF-βの役割に着目し、高度に線維化した膀胱組織では血管新生が抑制されているという予想からTGF-βの血管新生における役割についての基礎実験を行った。SmadはTGF-β群の下流に存在し、主に転写因子として作用するR-Smad(Smad1, 2, 3, 5, 8)、R-Smadと協調して作用するCo-Smad(Smad4)、これらのシグナル伝達を抑制するI-Smad(Smad6,7)に分類される。我々は本年度、ヒト血管内皮細胞HMEC-1にアデノウイルスによりSmad6,7を強制発現し、増殖能、遊走能を評価し、昨年までに確立したマトリゲルコート培養皿上でのtube-formation assayを行った。Smad6,7は血管内皮細胞の増殖をTGF-βの存在の有無にかかわらず軽度に抑制することが確認された。またTGF-βはVEGFにより誘導される血管内皮細胞の遊走を抑制するが、Smad6,7はTGF-βの作用を阻害することで血管内皮細胞の遊走を促進することが確認された。tube-formation assayではSmad6,7は血管内皮細胞による血管新生をコントロール群と比較し面積で54-76%、tube長で55-75%抑制することが観察された。以上の結果よりI-Smadは血管内皮細胞の増殖能、遊走能に影響を与えることにより、血管内皮細胞による血管新生を抑制することが証明された。
|