正常あるいは前立腺肥大症との比較において、前立腺癌組織で特にそのプロモーター領域でのメチル化が高頻度に生じている遺伝子群を同定し、これら遺伝子群のプロモーター領域でのメチル化の頻度が前立腺癌の悪制度の指標と相関するか否かを検討した.MDR-1遺伝子、GSTPi遺伝子、APC遺伝子はほぼ癌組織で特異的にメチル化していることを見いだした.次に、これら3種類の遺伝子のメチル化の組み合わせにより癌診断が可能か否かを検討した.まず、ロジスチック回帰分析により得られた、各々の遺伝子の癌組織におけるメチル化リスクを肥大症組織に対するリスクを1として算出した。各検体におけるメチル化指数は、これら3種類の遺伝子のメチル化リスクを総和を想定した.以上でえられたメチル化指数は、Gleason score、PSA値およびpT分類と統計学的に有意に相関した.この結果より前立腺組織におけるMDR-1遺伝子、GSTPi遺伝子、APC遺伝子のプロモーター領域でのメチル化の組み合わせにより、各々の前立腺癌がもつ悪性度の質的診断への応用が可能と考えられた. 一方、CYP1A1遺伝子プロモーター領域、特に-1800bp前後に存在するエンハンサーでのメチル化は、喫煙と関連しており、喫煙者前立腺癌患者ではこの領域のメチル化が弱く、逆に非喫煙前立腺癌症例から得られた前立腺癌組織では、メチル化が強く生じていることが判明した.この結果は喫煙と前立腺癌との関連を裏付けるものと思われる.
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