我々は米国Johns Hopkins 大学教授のGetzenberg RH らと共同で行ったヒト前立腺に関するゲノム解析(Proc Natl Acad SciUSA 2002)を基盤に先進的研究を推し進めている。その成果の1つとして、発現低下していた遺伝子のうちMacrophage inhibitory cytokine-1 (MIC-1)の発現消失が有症候性BPH患者の前立腺における炎症性変化と密接に関連することを発表した(J Urol 2004)。また、我々は若年非細菌性前立腺炎ラット作製に成功しおり、BPHの治療モデルとして有用であると考える。 当該年度、我々は1)ヒト前立腺組織におけるMIC-1遺伝子の発現レベルと前立腺関連臨床パラメーターとの関連を検討し、MIC-1遺伝子のdown-regulationが無症候性慢性炎症に伴う間質優位への前立腺組織構造変化に関連してQmax低下を惹起している可能性を報告した。2)若年非細菌性前立腺炎ラットを用いた研究にて、モデルラット前立腺組織におけるMIC-1遺伝子のup-regulationが確認された他、非処理老齢ラットでは特に腺構造の破壊の著しいものでdown-regulationが顕著であることを発見、投稿中である。3)若年非細菌性前立腺炎ラットを用いた薬物治療実験に移行した。前立腺炎治療薬であるセルニチンポーレンエキス投与ラット群と非投与群との比較検討を現在行っている。 最近、前立腺における炎症反応がBPHの症状発現に主導的役割を演じることが認知されつつある。我々は有症候性BPHのImmune Inflammatory Disease としての側面から分子生物学的研究を行い、新たな治療戦略の構築を目指している。
|