前立腺癌の発生や進展には、男性ホルモンの作用が大きく関係しているため、ホルモン療法が有効な治療法と考えられている。しかし、治療開始から数年後にはホルモン非依存性癌(再燃癌)となり、再燃癌に対する有効な治療法はいまだに開発されていない。再燃癌進展の原因の一っとしては、再燃癌細胞自身によるオートクリン作用や周囲の間質細胞、脂肪細胞から産生される増殖因子によるパラクリン作用による機構の存在が考えられる。 (1)ヒト脂肪前駆細胞を脂肪細胞へと分化した後、培養上清を回収した。回収した培養上清を前立腺癌細胞株(LNCaP、DU145)および前立腺間質細胞株PrSCに対して加えて、各細胞の増殖について検討した。その結果、すべての細胞において、細胞増殖の増加が認められた。特に間質細胞において増殖の増加が顕著であった。 (2)脂肪細胞培養上清を用いて、サイトカインメンブレンアレイをおこない、脂肪細胞からの分泌サイトカインについて検索した。その結果から、幾つかのサイトカインが脂肪細胞から分泌されていることをあきらかとした。現在、これらのサイトカインと前立腺細胞の関係について検討している。
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