ビスホスホネート剤が前立腺癌細胞に与える影響について、(1)抗がん剤存在下におけるビスホスホネート剤の細胞増殖への影響について検討した。また、(2)ビスホスホネート剤によるアポトーシス関連因子および転移関連因子の発現変化について検討した。 (1)前立腺癌由来培養細胞株LNCaPおよびPC-3細胞に各種抗がん剤(パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、エトポシド)および各種ビスホスホネート剤を作用させた場合、ビスホスホネート剤ではLNCaP細胞に比べPC-3細胞のほうが、また抗がん剤ではPC-3細胞に比べLNCaP細胞のほうがより強い細胞死誘導作用を示した。抗がん剤とビスホスホネート剤を同時に作用させた結果、そのほとんどの組み合わせにおいて、ビスホスホネート剤と抗がん剤による相加的な細胞死誘導作用が認められた。同時に作用させた場合の細胞死誘導作用はホルモン応答性の異なる二つの細胞間での相違は認められなかった。 (2)PC-3細胞にビスホスホネート剤を作用させた結果、urokinase-type plasminogen activator(uPA)およびbcl-2の発現低下が観察された。uPA発現抑制作用は第二世代のパミドロネートを処理した場合に最も顕著であった。パミドロネートによるuPA発現抑制はイソプレノイド合成経路の中間体を同時に処理することにより、uPA発現抑制は回復した。また、ゲラニルゲラニルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤によって、uPAの発現低下が引き起こされた。従って、uPAの発現低下機序の一部はビスホスホネート剤のイソプレノイド合成経路阻害作用により説明できることが示唆された。
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