平成13年から平成17年の4年間に当院で手術加療を受け、インフォームドコンセントの得られた子宮内膜癌患者78症例及び子宮体部を除いた部位の婦人科疾患にて子宮摘出されかつ正常性周期を有する患者12名の子宮内膜検体を研究対象とした。手術摘出標本をホルマリン固定後パラフィン抱埋した検体に、血管新生関連因子及び新規血管新生阻害因子Vasohibinを一次抗体とした免疫染色を施し、子宮内膜癌の腫瘍間質と正常子宮内膜間質における血管密度・リンパ管密度・Vasohibinの発現頻度、VEGF receptor II (VEGFR-2)の発現頻度を測定した。上記研究は東北大学医学部倫理委員会により承認を受けていた。 高分化型類内膜腺癌・中分化型・低分化型と組織学的に分類した腫瘍間質において血管密度・リンパ管密度は、低分化型で高分化・中分化型よりも有意差をもって増加していた。VasohibinとVEGFR-2の発現頻度に関しても低分化型で高分化・中分化型よりも有意差をもって増加していた。また、VasohibinとVEGFR-2の発現頻度には有意な正の相関を認めた。腫瘍間質を正常内膜間質と比較しても血管密度・リンパ管密度・VasohibinとVEGFR-2の発現頻度において各々有意差をもって腫瘍間質で増加していた。 子宮内膜癌においては低分化型ほどより盛んな腫瘍循環形態を形成していることが明らかとなった。また、低分化型ほどVasohibinとVEGFR-2の発現頻度が増加しており低分化型ほど強く血管新生を求めていることを証明した。in vitroではVasohibinとVEGFR-2の発現頻度が正の相関を有することは理論上知られていたが、今回人癌種において世界で初めてこのことを明らかにした。子宮内膜癌にとってVasohibinが有益な血管新生阻害因子となりうることを示唆した。 以上の結果に関してCancer Scienceにアクセプトされ掲載されることになった。
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