本研究は、妊娠女性を対象として膣・尿路・腸管の細菌叢を前方視的に調査し、Staphylococcus saprophyticusの各臓器におけるcolonizationの頻度および、膀胱炎の起因菌としての頻度を明らかにすることを目的として行っている。平成19年3月31日までに、研究代表者が産婦人科診療を行っている筑波大学附属病院を受診する妊娠女性で同意の得られた症例89例について、妊娠初期(妊娠12-16週)に、膣・尿・直腸の細菌培養・同定検査を行った。これまでのところ膣において検出されたStaphylococciは、Staphylococcus haemolyticusが尿で5検体(5.6%)、膣で5検体(5.6%)、Staphylococcus epidermidisが尿で6検体(6.7%)、膣で11検体(12.3%)、Staphylococcus aureusが尿で5検体(5.6%)、膣で1検体(1.1%)、Staphylococcus hominisが膣で1検体(1.1%)、Staphylococcus warneriが尿で1検体(1.1%)である。Staphylococcus sapropyticusは、膣・尿・直腸のいずれの部位においても検出されていない。また、尿でEscherichia coliが検出されたのは17検体(19%)であったが、このうち菌量が10^5CFU/ml以上のものが2検体あり、この2症例については無症候性細菌尿として抗菌薬による治療を行った。概して研究は順調に行われており、平成19年度も計画通り進める予定である。
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