研究概要 |
プロラクチン細胞において、estrogen receptor (ER)のリガンド非依存性活性化が認められるかどうかを検討した。プロラクチン細胞特異性は、Cre/loxPシステムにより実現した。ERの活性化を検出する系として、独自に作成したestrogen response element (ERE)配列の下流にthymidine kinase (TK) promoterおよびluciferase遺伝子を接続したDNAコンストラクト(2×ERE/TK.Luc)をadenovirus vectorを用いて細胞に遺伝子導入した。ER活性化が認められた場合には、ICI182,780の処置によりその活性が消失するかどうかでER特異的であることを確認した。 1.リガンド非依存性のER活性化における、IGF-1、EGF、forskolin、bromocriptine (BC)の効果を調べたところ、無処置および長期エストロジェン投与ラットの初代培養下垂体細胞および、細胞株MCF7、GH3、GH4C1におけるいずれの細胞種においても効果は認められなかった。 2.MCF7 cellにおいて、由来の異なる3種のEREレポーター遺伝子(ERE-TK、3ERE-TATA、4ERE-TATA)によっても、ERのリガンド非依存性活性化は認められなかった。 3.一方で、リガンド依存性のER活性化が、BCの存在によりある程度抑制されたことから、ドーパミンによるPRL細胞機能抑制作用とエストロジェンの作用機構が、ER活性化においてクロストークしている可能性が示唆された。 本研究より、初代培養プロラクチン細胞、またその細胞株であるGH3、GH4C1、その他MCF7細胞においても、エストロジェン以外の刺激により、ERがリン酸化などの修飾を受けて転写活性化能を獲得する経路は認められないことが明らかとなった。
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