新生児低酸素性虚血性脳障害に対する低体温療法の影響を調べた。すなわち、新生児ラットを用いて、脳における神経新生を検討する目的で、細胞分裂のマーカーBromodeoxyuridine(BrdU)を用いた免疫組織染色を行った。すなわち、重度低体温にした群とコントロール群に分け、各群にBrdU(100mg/kg)を腹腔内投与し、各群における脳室下層(SVZ)領域と顆粒膜細胞近傍(DGZ)領域におけるBrdU陽性細胞数を定量化した。また同時に、BrdU投与1O日後に、抗BrdU抗体および抗ダブルコチン抗体(神経前駆細胞のマーカー)による蛍光二重免疫組織染色を施行した。結果は、DGZにおいては、低体温群において有意な減少を認めた。また、蛍光二重免染により、BrdU陽性細胞はダブルコチンにも二重に染色されており、神経前駆細胞であることが分かった。すなわち、重度低体温により、神経幹細胞の新生が抑制されることが示唆された。このことは、新生児虚血性低酸素性脳障害に対する低体温療法を臨床応用する際に、考慮すべき知見と思われ報告した。 また、新生児脳障害を引き起こす一要因として母体妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病に伴う胎児脳障害を含めた胎児発育障害は重要な因子となってくる。そこで、胎盤、羊水に発現するS1OOBおよびtumor-associatedreceptor-bindingcancer(RCSAI)について解析した。母体血清中・胎盤・羊水中S1OOBは正常妊娠では、妊娠週数にかかわらず変化がなかったが、妊娠高血圧症候群とくに胎児発育障害を引き起こした場合には、有意に上昇していることがわかった。また、RCSA1の発現は妊娠糖尿病では低いが、糖尿病合併妊娠では正常妊婦と変わらないことを見いだした。これらは、胎児期低酸素性虚血性脳障害の一原因として、これらの母体合併症も存在することを考慮するに、重要な知見と思われた。
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