18年度の実験予定に従い、まずマウスGnRH神経細胞株であるGT1細胞を、0.01〜100nMまで段階的にエストラジオールにて刺激を行なった。total RNAを抽出し、エストロゲン受容体(α、β)及びプロゲステロン受容体の発現誘導について半定量PCR法を用いて検討した。GT1細胞にはエストロゲン受容体αおよびβが発現しており、これらはエストロゲン添加による発現調節を受けていなかった。一方プロゲステロン受容体は、エストロゲン非存在下ではほとんど発現していなのに対し、エストロゲン添加によりおおむね濃度依存性に発現が誘導されることが明らかとなった。これらの結果をもとに、GT1細胞をエストロゲン無添加のものと、100nMエストラジオールにて刺激を行なったものとからDNAマイクロアレイ法にてエストロゲンによる発現調節を受ける遺伝子のスクリーニングを行った。また、同様にしてエストロゲン100nM及びプロゲステロン10pM刺激下における誘導遺伝子のスクリーニングを行った。DNAマイクロアレイ法により、エストロゲン添加により有意に発現が増加あるいは減少する遺伝子はそれぞれおよそ150個存在した。また同様にしてプロゲステロンにより誘導される遺伝子に関してもほぼ同様数の遺伝子発現の変化を示すことが明らかとなった。これらの遺伝子について個々にGT1細胞の興奮性や生理的役割に関与している遺伝子が存在するかを主にPubmedを用いて検索した。興味深い遺伝子として、NO synthetase 3(NOS3)が挙げられる。本遺伝子は、今回のマイクロアレイ法によりGT1細胞においてエストロゲン存在下で有意に増加し、プロゲステロン存在下で減少する結果が得られた。NOはこれまでの報告ではLHサージ機構に重要な役割1をはたしている可能性が示唆されている。現在、性ステロイドによるGT1細胞においてのNOS3発現調節をreal timePCR法を用いてより詳細に検討中である。さらに、今回のスクリーニングにより、calcium sensing receptorが豊富に発現していることが明らかとなった。本遺伝子はエストロゲン・プロゲステロンによる発現調節は示唆されていないものの、近年細胞間の情報伝達機構の一つとして報告されている蛋白である。本蛋白のGnRH分泌機構における役割について検討を加えた。
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