1.妊娠高血圧腎症モテルマウス作成 18年4月より293細胞を用いて大量培養によるhuman sFlt-1発現アデノウィルスベクターを精製した。次に雄と雌のICRマウスを交配させ、妊娠8から9日目に尾静脈からこのアデノウィルスベクターを1×10^9PFU投与し、妊娠16から17日目の血漿中のhuman sFlt-1蛋白発現をELISAにて計測した。しかしhuman sFLt-1の発現が弱く、また高血圧や蛋白尿の症状は認められなかった。2度このアデノウィルスベクターの精製を行い、またマウスをC57BL/6マウスにも投与したが、同様に発現は弱く血圧や尿め変化も認めなかった。 このためhuman sFlt-1からmouse sFlt-1発現アデノウィルスベクターを使用することへ変更し、精製後同様に妊娠させたICRマウスに1×10^9PFUのアデノウィルスベクターを尾静注した。妊娠16から17日目の血漿中のmouse sFlt-1の発現はhuman sFlt-1アデノウィルスベクターの時の発現より高く、血圧の上昇と蛋白尿も認めた。 現在mouse sFlt-1発現アデノウィルスベクターを2×10^9PFUに増量し、mouse sFlt-1の発現のレベルの確認と共に血圧の変化や蛋白尿の有無を計測中である。またこのマウスの腎臓や肝臓、胎児、胎盤への組織学的影響も解析中である。 2.human PlGF発現アデノウィルスベクターの作成について human PlGF発現アデノウィルスベクターは東京大学医科学系研究科循環器内科・前村氏より共同研究にて譲渡していただけることになった。 また最近の論文報告で妊娠高血圧腎症妊婦においてsoluble endoglinの発現が高いことやこの蛋白を発現するアデノウィルスベクターとsFlt-1発現アデノウィルスベクターをラットに同時投与するとより重症な妊娠高血圧腎症が発症することも報告されており、soluble endoglinが妊娠高血圧腎症発症においてsoluble sFlt-1と同様に重要な因子であると考えられてきている。 以上よりsoluble endoglin発現アデノウィルスベクター作成へ変更し、作成を開始している。
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