研究課題
子宮内膜における感染防御機構として、上皮細胞による表層の被覆(バリア)に加えて、局所の免疫細胞や各種サイトカインの関与が知られている。近年G蛋白共役型受容体であるP2Y14/GPR105(Gprotein-coupled receptor for UDP-glucose)がIL-8を介した免疫反応を担うことが報告された。IL-8は好中球やTリンパ球の遊走能を有することから、我々はP2Y14が子宮内膜固有の免疫防御機能に関与している可能性につき検討を行った。学内倫理委員会の許可の下、同意を得られた生殖年齢症例の良性疾患子宮内膜から抽出したtotal RNAを用いてRT-PCR法を行いP2Y14 mRNAの発現を解析した。さらに免疫組織化学染色法を用いて各月経周期の子宮内膜におけるGPR105の発現を調べた。また、子宮内膜腺上皮モデルとして子宮内膜腺癌細胞株Ishikawa細胞を用いて、P2Y14のリガンドであるUDP-glucoseを添加した際のIL-8mRNAの産生を解析した。RT-PCRおよび免疫組織化学染色の結果、P2Y14は間質より腺上皮に顕著に発現し、その発現レベルは月経周期に依存せず一定であった。また、子宮内膜炎症例では正常内膜よりP2Y14 mRNAの発現が増加していた。さらにIshikawa細胞を用いた系では、UDP-glucose添加によりIL-8の発現は用量依存的に増加した。細菌感染や物理的刺激により細胞破壊が生じると細胞内在性物質であるUDP-glucoseが放出されることが知られている。子宮内膜腺上皮細胞では細胞障害により放出されたUDP-glucoseがP2Y14を介しIL-8を発現することで免疫細胞を局所に誘導させるという、非自己の認識でなく自己の細胞障害の認識により作動する新たな免疫防御機構が存在する可能性が示唆された。
すべて 2007 2006
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