申請者は、子宮体癌患者検体を用いてMSIステータスの検討を行い、計142人でのMSIステータスを確定した。これにより子宮体癌でのMSI陽性率は33%であった。MSI標的遺伝子の反復配列のずれによって産生されるフレームシフト異常タンパクがMSI陽性腫瘍特異的な免疫応答を生じる有力な癌抗原の候補であると考え、MSI標的遺伝子のうち反復配列を有するTGF-βRII、PTEN、BAX、hMLH1、hMSH6、CDX2について、それぞれのフレームシフトが生じた場合に産生される変異部分の融合タンパクを作成し、MSI陽性子宮体癌患者血清中の抗体検出を試みた。その結果、TGF-βRII、PTENについて、実際の遺伝子変異とそれに対応した特異抗体を複数の患者で検出に成功し、当初の研究課題を達成した。この2つの変異タンパクに対して免疫応答が生体で生じていることを示した報告はこれまでになく、貴重な結果と考えている。 次に、申請者は実際にフレームシフト変異タンパクが癌細胞で産生されているかを確かめるため、ウサギに変異ペプチドを免疫してポリクローナル抗体を作成し、ウェスタンプロット法でタンパクの検出を試みたところ、変異タンパクに相当する分子量のタンパクを検出した。現在、そのタンパクが実際に変異タンパクであるかを確認する作業を行っている。 変異ペプチドに対するCTLの誘導は健常人の末梢血より単核球を分離して誘導を行ったものの、有効なエピトープの検出ひいては誘導成功には至らなかった。
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