研究課題
頭頸部扁平上皮癌患者においてp53やヒ乳頭腫ウイルス(HPV)等の癌抗原に対する特異的な免疫応答を誘導するため、その予備的な実験として頭頸部癌患者末梢血中の免疫担当細胞、特にregulatory T細胞(Treg)等のT細胞サブセットや樹状細胞(DC)サブセットの解析を行った。その結果、頭頸部癌患者では末梢血中のmyeloidDCの比率の低下、DCにおけるHLA-DR分子発現の低下、Tregの比率の上昇とCD8+細胞との逆相関を認め、頭頸部癌患者における免疫抑制状態を明らかにした。この成果を2本の英文原著論文として発表した。まずはwild-type (wt) p53エピトープに対する頭頸部癌患者の免疫応答を調べるため、患者の末梢血中CD8+細胞を用いて、wt p53由来HLA-A2/A24拘東性の7種のペプチドを誘導したDCで刺激した。CD8+細胞のwt p53ペプチドに対する特異的なIFN-γ産生をELISPOT assayにて評価すると共に、末梢血中のT細胞サブセットの動向を調べた。その結果23症例の半数以上でwt p53由来ペプチドに対する特異的免疫応答を誘導することができ、抗原分子wt p53の過剰発現は特異的免疫応答には必須ではないことが分かり、特異的免疫応答の誘導には抗原の発現以外の要因が関与している可能性があった。その一つの要因として、特異的免疫応答を誘導できた症例は末梢血中のTc1/Tc2比が高かったことから、末梢血中のCD8+細胞のtype1/type2免疫応答のバランスがwt p53特異的免疫応答の誘導に関与している可能性が示唆された。この成果は日本癌学会・米国癌学会(AACR)にて報告され、現在英文誌に投稿中である。さらに抗癌剤5-FUの代謝酵素や薬剤耐性に関わる蛋白の頭頸部癌サンプルにおける発現について、2本の英語原著論文を発表している。
すべて 2007 2006
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