研究概要 |
疾病の診断や治療の際の適切な手術法の選択等は,各医師の経験に基づく判断によるところが大きい.しかし,様々な症例に対して,すべての医師が十分な経験やデータを有しているわけではなく,また,医師が置かれた環境によっては,十分な経験を得にくいという問題もある.そこで,適切な治療を支援するためのシステムの構築が必要とされている.本研究では,疾患の個人差が大きく,その治療法に多くのバリエーションがある中耳手術を取り上げ,治療支援システムの構築を試みる.具体的には,内視鏡画像中のカラー情報により,穿孔や瘢痕などの鼓膜の異常部位を自動的且つ迅速に検出し,罹患部位の正確な把握とその形態的特徴を数値解析データベースおよび臨床知見データベースと照らし合わせ,適切な治療法の提示および治療後の聴力改善度の予測を可能とするシステムを構築することを目指す. 本年度は,内視鏡画像中のカラー情報による鼓膜穿孔部の自動検出と,数値解析データベース構築のためのヒト中耳FEMモデルによる音場解析を行った. 内視鏡画像中の鼓膜穿孔部の自動検出を行った結果,以下のことが明らかとなった. 1.ハブ変換により鼓膜穿孔部と鼓膜の自動抽出を行い,穿孔部の大きさを求めた結果,穿孔部は検出できるものの,鼓膜形状をハブ変換で検出することは困難であり検出能が不十分であるため,他の手法と組み合わせて検出能の向上を試みる必要がある. ヒト中耳FEMモデルによる音場解析を行った結果,以下のことが明らかとなった. 2.臨床的に考えうる範囲における鼓膜の厚さと物性値の変化により,中耳の伝音効率は変化する.鼓膜の変化を画像から評価できれば,聴力の変化を推定可能と考えられる.
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