ポストゲノム時代に入り、アレルゲンなどの異物を構成する糖鎖の免疫系に対する多彩な作用が注目されている。特に近年は、糖鎖はB細胞(抗体)やT細胞の認識分子(エピトープ)となり獲得免疫に関与するだけでなく、レクチン様受容体や補体などとの結合を介して自然免疫の活性化に関与する可能性が示唆されている。しかしながら、アレルギー性鼻炎の成立・維持にアレルゲンを構成する糖鎖がいかに関わるのか、特に糖鎖に特異的な受容体を介したシグナルの解析という点からは未明な点が多い。私の教室ではこれまでに、スギ主要アレルゲンCry j 1やアスペルギルスなどのアレルゲンを構成する糖鎖が、アレルギー性鼻炎の病態に関わることを報告してきた。そこで今回はCry j 1を構成する免疫活性糖鎖M3FXに対する特異的な受容体の同定をプロテオミクス解析を用いて網羅的に行った。研究計画に対するインフオームドコンセントをいただいたスギ花粉症患者より末梢血を採取する。末梢血単核細胞よりタンパクを抽出し、二次元電気泳動にて分離した。M3FXはビオチンにて標識した。ビオチン標識したM3FXをゲル上に添加した。さらにアビジン標識ペルオキシダーゼなどを添加し、M3FXと反応するタンパク質スポットを可視化した。その結果、約100のスポットが検出された。検出されたスポットをゲルから切り出し、トリプシンで酵素消化した。現在、処理された検体はMALDI-TOF/MS(matrix assisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry)にて分析し、ペプチドの分子量セットを作製している。来年度はMascotやProfoundなどのタンパク質同定用ソフトを用いて、得られた分子量セットの情報を基に糖鎖受容体を同定する予定である。
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