研究概要 |
平成18年度の研究では、マウスの正円窓膜経由の外来遺伝子導入を試み、内耳内で遺伝子発現の認められる部位と時間経過を検討した。マウスの正円窓膜上にGJB2_<R75W>-eGFP変異遺伝子を発現するプラスミドベクターをリポソームとしておいた。72時間後に抗eGFPモノクローナル抗体をもちいた免疫染色法で内耳内での遺伝子発現を検討したところ、コルチ器の基底膜上皮細胞、外有毛細胞、内、外柱細胞、クラウディウス細胞や、螺旋靱帯、螺旋板縁での明らかな遺伝子発現を認めた。遺伝子発現は蝸牛の基底回転側から、頂回転側まで認められた。また、変異遺伝子に特異的なプライマーを用いたRT-PCRでも投与72時間後の内耳内での変異遺伝子発現を検出した。以上のデータは、正円窓膜から蝸牛管内へ導入されたプラスミドベクターが、コルチ器基底膜の上皮細胞やcanaliculi perforantesをへて、蝸牛管内へ移行しうることを示す。投与後1日目,5日目では免疫染色では明らかな遺伝子発現は検出されなかった。さらに、リポソームにより不可逆的な内耳障害がおこるかどうかを検討するため、投与12日後に内耳の顕微鏡的形態を検討したが異常は認めなかった。以上の様に、現在までの免疫染色による検討では、投与72時間後のみでの、一過性の遺伝子発現が認められている。しかしながら更に前後の時期にも、免疫染色によって検出しえなかった変異遺伝子発現が存在する可能性はある。今後は、ABRを用いて聴力がどの様に変化しているか経時的に検討し、変異遺伝子による聴覚機能への影響を検討する方針である。
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